2014年を振り返って。


 自分にとってこの1年間は、新たな領域へ足を踏み入れた1年間であり、変化を続けた1年間でもありました。この1年を振り返って自然と湧き出てくる想いは「夢を追えることへの感謝の気持ち」です。常に全力で駆け抜けてきた日々には余裕がなくて時には大切なことを見失ってしまった時間もあったけれど過ごしてきた時間その一瞬一瞬すべてが自分にとって大切な時間でありかけがいのないものだと振り返って確認することができます。



2月からフランスへ渡り現地でのトレーニングとレース生活。寒さの残る春のフランスで今シーズンのスタートを迎えられ改めて自分がこの地で夢を追えることへの嬉しさを噛みしめました。

   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   (写真:橋川さん)



4月に日本代表チームで参戦したU23ワールドカップ戦。U23世界最高レベルのレースで黒枝選手をエースとしてチームプレイをして戦えたあの瞬間の空気の温度が変わったと思うほどの鳥肌は忘れられない。自分がこの競技を通して感じる本当の楽しさ、喜びはきっとその先にあるものだと確信した。また、このレースではこうして整った活動環境とサポート体制があれば、日本チームが世界舞台で戦えること。自分自身、そして浅田監督が目標としているU23カテゴリーのうちの達成目標である世界トップ10入りをすること。それがもう少し現実的に意識できるようになってきたと僕のなかではこのとき確かに感じることができた。

   
   
   
   (写真:田中苑子さん)

4月にはフランス、ベルギー、オランダ、イタリアでU23ワールドカップを含めたレースを走った。この一ヶ月間は一言で例えるなら嵐のような一ヶ月間だった。今まで自分の中にあった常識が破壊され続けていった。この地ではこの地でのやり方がある。レースの走り方、技術、戦い方、必要なこと、すべてが今まで日本で育ちそこで蓄積されてきた常識ではまるで通用しないと感じた。世界で戦うための世界基準のそれを身に着けるために自分の中の常識を破壊していった。この期間に自分はひとまわり成長できたと思う。未知の領域を体験して圧倒的に視野が広がっていく。1レースを走り終えるたびに自分が大きく変化していく感覚がはっきりとわかる。手の震えるような最高の興奮が止まらない。それと同時にこの時に僕は世界へ挑戦するということの本当の意味を知りました。ここへ来るだけではいけない。ここでの勝負に勝たなきゃいけないのだと。今年はズタボロにされたけど来年は先頭で戦える力をつけて再びここへ帰ってくると約束した。

 
   
   (写真・浅田監督)
   
   (写真:田中苑子さん)

   
   
   
   



ヨーロッパから帰国後の5月には国内でのUCIステージレースの[ツアー・オブ・ジャパン]と[ツール・ド・熊野]にも日本代表チームで走らせて頂きチャンスを貰ったが求められた走りをすることはできなかった。この頃、自分の中で少しずつ何かがうまくいかなくなっていた。その時期、今は少しうまく加速できていないと感じていた。シーズンも中盤へ差し掛かっていたその時期、自転車というものが自分にとっていつのまにか重く感じてしまうものになっていることに気付いた。理想ばかりが高くなり結果を追い求めて走る。その一方で現状は理想にほど遠く及ばないレースが続いていた。理想と現状のギャップが大きくなりすぎたとき選手としての自分を自己評価ができなくなり自信を失ってしまった時期もあった。

   
   (写真:浅田さん)
   
   (写真:高木さん)
   
   (写真:蠣崎)



6月、自身初東南アジア、インドネシアスマトラ島での9日間9ステージのツール・ド・シンカラ。今まで見たこともなかったまったく新しい世界はとても新鮮に目に映った。UCIアジアツアーという初体験のレースにはもちろん、東南アジアにとって自転車ロードレースという新しいスポーツが歓迎され受け入れられていること。大会運営に関わる現地の人たちにとってもロードレース運営というのは新しい挑戦であること。初めて見るロードレースのスピードに驚いて笑顔で応援してくれるスマトラ島の人たちが本当に多かったこと。それらすべてに感動したし今まで見たことのなかった世界を見たことで自分の中に新しい気づきがいくつも生まれた。そしてエリート選手2名、内間選手と初山選手(ブリジストンアンカー所属)とチームメイトとして走る機会があったことは貴重な経験でした。先輩選手たちが強い姿を見せてくれたことで自分は勇気をもらいました。

   
   
   
   
   
   
   (写真:田中苑子さん)
   
   
   
   
   
   
   



全日本選手権2014エリート
「耐えれば乗り切れる」苦しいときにはそんな言葉を何度も自分に言い聞かせて10位までのポイント獲得を目指して走ったが終盤に集団から千切れて勝負から脱落してしまった。千切れてからゴールするまでひたすら悔しかった。でも、ただゴールラインまで全力で踏み続けることを辞めないことしかできることはなかった。20位。あれが自分の100%だった。

   
   (写真:岡元さん)
   



7月〜9月は再びフランスとスペインへの遠征。夏のフランス特有の雰囲気がとても好きでした。広い土地に人は少なく自然が身近にある。時間そのものが少しゆっくり流れているのかと錯覚するような自然風景が広がっている。そんなフランスへの今年後半の遠征。この夏こそ今まで経験してきたものをカタチにしたい。今年のシーズンが始まってからずっと追い続けてきたものを掴みたい。そう思って走り続けた後半のフランス遠征でした。
 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   



期限が迫る焦りと共にある競技生活。好きなだけではやっていけない。選手であるからには必要とされなければレースを走る意味がなく、チームに能力を必要とされて役割を果たせてこそレースを走る意味がある。成果と結果が残ってこそ次へ進める。だから前へ進んでいるという実感の持てないときは当然苦しかったし悔しかった。悔しくて眠れない夜もあったし、大切なことを見失ってしまった時期もあったけれど、そういううまくいっていない時の試行錯誤と叫びのような想いは今となって選手としての蓄積された力になっていると思っています。



今年1年を振り返って、世界の至るところの一瞬に感動できたこと、夢へ挑戦し続けてこられたこと、刺激的な日々の中に苦しいこともあれば楽しいこともたくさんあったこと。たくさんの方々が応援してくださり力を貸してくれました。そういうことに感謝の気持ちが湧き上がってきます。本当に濃い1年間でした。



来季2015年シーズンも真っ直ぐに前だけを見て挑戦していける。今はその環境があることを何より嬉しく思います。来年こそは今年できなかったこと、回ってきたチャンスをものにするということを達成してその先にある次なるステップへ進む変化の1年にしたい。


写真を撮ってくださった皆様ありがとうございました。


面手利輝