あの本を求めて、、、

 夕暮れ時、太陽の光が西の低い位置へと降りてゆき、時間が経つごとに空が暗みを強くしていき、街灯がともり始める。そんな夕方に僕は出かけた。こんなふうに、高揚する気分で靴を履いたのは久しぶりのことだった。


 寮から最寄の駅は京王線八幡山駅で、そこまでは歩いて15分くらいだろうか。駅までの道のりは、静かな住宅街を縫うように抜けてゆき、途中には公園があって、そこで止まったまま揺れないブランコが冬の夕方を寂しさを物語っている。


住宅街にポツンと置かれている自動販売機は、あたりが暗くなればなるほど、蛍光灯が反発するように明るく見える。そこで立ち止まり、コーンポタージュを買って飲んだ。歩きながら飲み干すころには駅で新宿行きの電車を待つ。電車に乗り、新宿までは正確な時間は知らないが、15分くらいのように思う。


 新宿駅西口から近いビルの地下にある、新宿最大の書店「ブックファースト新宿店」へ行った。


 そこで「秒速5センチメートル新海誠作の小説を買いました。ずっと読みたいと思っていたもので。


 帰りには、西口に集まったストリートバンドがやたら良い歌詞の歌を奏でている。その歌は、テレビで注目されている名ばかりの歌手グループより、確実に人々の心に響く何かがあるように僕は思った。

 
そこでつい立ち止まって聞いていたら、夢中に聞いてしまいそうになるのだ。歌の終わりと同時に、そこで立ち止まって聞いていた人から拍手が送られた。


 自分は、その光景が暖かくさえ感じたのだ。

 


 帰り道はゆっくり来た道を戻り、そのあと自分のベッドで眠るまで本を読んでいた。