『ラ・コート・ピカルド』(UCIネイションズカップU23) レースレポート

 レース名『ラ・コート・ピカルド』(UCIネイションズカップU23)
 27カ国の代表チームが参加するワールドカップ戦。1チームあたり選手6人構成で約160人の選手が参加。日本チームの目標は15位まで与えられるネイションズポイントの獲得。作戦はスプリントの得意な黒枝選手をエースとし彼を先頭集団でスプリントさせてトップ10入りを目指し確実にポイント獲得を狙うレースをすること。前日のミーティングで各選手それぞれの役割を明確にしレースに備えた。自分の役割は黒枝選手のアシスト。


【レース情報】
 『ラ・コート・ピカルド』(La Côte Picarde)
  -カテゴリー:UCI Europe Tour 1.Ncup
  -期間:2014年4月16日(水)
  -距離:178.6km
  -開催場所:フランス・ピカルディー地方


   
   Photo:Sonoko TANAKA



【レースレポート】
 リアルスタートと同時に集団のスピードが上がる。集団先頭ではアタックの打ち合いが起きてきて強豪国はどこの国も逃げに自国の選手を加えさせようとする動きをしていた。やはりこの世界最高レベルのレースは集団の密度も濃く好位置に自分の居場所を作ることも常に気を張っていないといけない。ピリピリとした緊張が緩まない180kmのロードレースが幕を開けた。

   
   Photo:Sonoko TANAKA




 やがて5人の逃げグループが形成され集団はスピードが緩む。レース中盤には逃げている5人と集団のタイム差は7分まで広がるがレースの全体距離の半分を消化したところあたりからオランダチームらが横風区間を利用してペースを上げて他国チームの選手の体力を消耗させながら逃げとのタイム差を詰めていく。ペースが上がり始めたレース中盤からは常に黒枝選手に風が当たらないように風上を走りサポートする走り方を心がけエースの体力温存に務めた。内野選手もその動きを手助けしてくれていた。
   

   
   Photo:Sonoko TANAKA

   
   Photo:Sonoko TANAKA




 レースも後半戦へと突入し2周するゴール周回に向けてスピードが上がり緊張感が高まってくる。周回コースには勝負のかかる上り区間がある。その上りを先頭付近で入らなければチームとしても苦しい。登り口で好位置を確保するためにペースを上げる主力チームに混じり清水選手に牽引してもらい自分と黒枝選手の位置を集団先頭へ引き上げてもらう。

   
   Photo:Sonoko TANAKA




 先頭付近で上り区間に入ることができたこともあって1回目の上りは順調にクリア。集団の人数も減りラスト1周回に突入。2回目の上りはかなりスピードが上がった。脚の消耗も激しくキツかったが黒枝選手が見える位置で何とか耐えきりすぐに黒枝選手の前へ出て最後の役割を果たそうと必死だった。



 ラスト数キロ地点の下りでスプリントに備えての位置取り争いが激化する中、デンマークチームが人数をそろえて隊列を組んでいる。その左側へイタリアチーム。オランダの選手やフランスの選手も良い位置に位置取ってはいるが人数をそろえていないので居場所をキープできていない。こうした局面ではやはり人数を揃えているチームが力があると感じた。後ろを走る黒枝選手から「デンマークの後ろ!」という指示が聞こえデンマークチームの後ろへを位置取り最終ストレートへ。スピードが上がる。



 脚の消耗が激しくもう限界。ここまで自分にできることは全てやった。もうこれ以上アシストとしてできることは何もない。ゴール2km手前でそう判断し後は彼に託した。ゴール200m手前で黒枝選手がデンマークチームに続いて5番手あたりでスプリントを開始するのが見えた。最高のカタチで迎えたゴールだと思ったがスプリント中ゴール100m手前で他国の選手と接触し黒枝選手は落車してしまった。自分はその絞られた集団後方で流れ込み43位ゴール。

   
   Photo:Sonoko TANAKA 写真右側の落車



 ポイント獲得圏内でのスプリントであっただけに非常に残念だった。黒枝選手が集団スプリントで落車してしまった瞬間の光景を少し後ろから見たとき、何とも表現できない悔しさが湧きあがってきた。でも一番悔しいのは黒枝選手本人に違いない。でも今回のレースでは世界レベルでのロードレースでもこうして日本チームが戦えるということを僕のなかでは確かに感じることができた。



 また、自分の役割・目的が明確であったことによって苦しい局面でも何とか耐えて自分の役割を100%こなすことが出来て良かった。自分の順位が惜しいと思ったらこれは出来ない。強豪国のアシスト選手はエースに全ての託しサポートすることに100%の力を使って散っていっている。そういう強豪国を相手に日本チームがこの舞台で戦うにはやはり同じ気持ちで走り、エースのサポートに100%の力を使うことがアシスト選手である今日の自分の役割だったと思う。

   
   Photo:Sonoko TANAKA 時速60km/hオーバーでのスプリントでの落車であったが黒枝選手は幸い骨折等はなかった。


 
 
【レースを終えて思うこと】

 今回こうしてナショナルチームの『ネイションズカップに向けた活動』を3月からフランスを拠点にフランスアマチュアレースでの実戦積み立て・トレーニングを準備として行ってきて4月にU23世界最高レベルのネイションズカップ戦でのポイントの獲得を目的としてやってきました。選手の強化や各選手のコンディショニング管理という要因ももちろんありますが、それだけではなくスタッフや環境のことも含め、サポート面においても最高の体制で臨めたと思ってます。


 こうして整った環境とサポートがあれば、日本チームが世界舞台でポイント獲得すること。また自分自身、そして浅田監督が目標としているU23カテゴリーのうちの達成目標である世界トップ10入りをすること。それがもう少し現実的に意識できるようになってきたと感じた。

 
 それと、今回のレース終盤の周回コースに入ってからの上りの苦しい場面、集団の中でも400w〜500wの間を行ったり来たりしている本当に苦しい場面。強豪国のヨーロッパ選手たちも苦しい表情をして走っているのを見て、「苦しいのは強豪国の選手たちも同じなんだ、自分だけじゃない。」と本心で思うことができた。いつも本当に苦しいときには気持ちのどこかに「この苦しさに耐えられない」と弱気が一瞬出てきてしまっていた。しかし今日はそうじゃないってことを生で実際に知ることができた。それは今後の勇気と自信に必ず繋がる。

 「できる」と思い込んだら力を出せるタイプなので引き続き19日に開催させる3戦目のU23ネイションズカップ『ZLMツアー』(オランダ)も頑張ります。


 JCF La Cote Picarde ネイションズカップレースレポート