2015年UCIロード世界選手権

2015年UCI世界選手権ロードレースU23

  



自分にとって初めての世界選手権ロードレース。その名の通り、その年の世界チャンピオンを決める世界最高の舞台。スタート前の興奮と緊張感に満ちた選手たちが自国の名前をコールされて国単位でスタートラインに並んでいく。JAPANと突き抜けた響きの良いコールがかかり自国を誇りに思い自信に満ちた気持ちでコースへ入りスタートラインに並んだ。


今までに経験のないほどの圧倒的な空気感に鳥肌が立ち、憧れでしかなかったこの場所へ、ここへ来るまでに覚悟を決めて歩んできた道筋を思い出しこみ上げてきたものがあり自然と波が出てきた。


スタートラインのアーチにかかる公式デジタル時計がスタートまでの秒数を刻んでいる。戦いの始まりを待つのは各国を背負う世界選抜の選手たち。その数分間が最高に興奮して怖いものなどもう何も無かった。4年間、自分の中で信じてきたものが間違いではなかったと確信できた、とびきりの瞬間だった。


最後の10秒がカウントダウンされスタートが切られ169名の選手たちが一斉に加速していく。いよいよ162kmの戦いの始まりだ。

  
  photo:Kei Tsuji


レースはスタートしてみると自分でも驚くほど冷静に頭に余裕を持てて走れていた。この大舞台を走ると自分は余裕を失うのではないかと思っていた。だが深く吐く息のように冷静であり不安は何一つ無かった。殺気に満ちた集団内では位置取りが激しくときより落車が起こることもあるがまったく動じない。


本当に高い集中域でレースを走れていた。10周回あるうちあっという間に7週目に入るホームストレートを通過した。残り3周、JAPANチームメイトの小石と共に勝負に備えていこうと温存していた力を使って位置取りを始めようと会話を交わした。自分も小石もレース終盤の勝負に向けて準備は万全だった。

  
  photo:Kei Tsuji


しかし小石が不運にもパンクしてしまいJAPANチームは小石を失う。集団内には自分と小橋の2人が残る。その2人で勝負することに切り替えた。
集団はハイペースでゴールへと向かいラスト1周へ入る。それと同時に雨が降り始めて路面がウェットになる。いよいよ身体を張っての位置取り争い、戦争とでも例えれば良いだろうか。常識はずれの時間帯の始まりだ。


ゴールまでの戦いに身体がもてばその後はどうなっても良いと思って走った。ゴール前ラスト4kmから石畳の登りが始まる。そこを先頭で入れれば最終局面の力勝負ができる。自身のトップ10入りを強く意識して残り7km。「世界トップ10入り」そんなワードが現実的に意識できた瞬間はもうそれだけでこれ以上の興奮はない。


直線下りを75km/hで走る集団前方で罵声を飛び交わしながら他国の選手たちと身体が当たり合いながらの位置取り争いをしているときは完全にゾーンに入っていた。そこにいる誰もがそれを怖いと思う気持ちよりも戦いに勝ちたいと強く思って走っている。石畳入り口まで500mの折り返しコーナーで集団前方で落車が起こり、自分の前を走る選手が落車しそれを避けきれずに突っ込み自分も転倒。一瞬で集団が前に見えなくなった。落ちたチェーンを掛け直し再乗車して全開で集団を追いかけたがハイペースで進む集団には追いつくことができず集団復帰は叶わず、最終局面の勝負に加わることができなかった。


結果:1分12秒遅れの 61位でのゴール。


転倒してからゴールまで1人で前を追いかけて走った最後の4.5km、そのときに感じたことはこの先も忘れない。叫ぶほど悔しい気持ちでゴールへ入り自分の世界選手権は終わった。

  
  photo:Kei Tsuji
  

でも、それは自分だけではないことも忘れちゃいけない。





世界という舞台で戦う選手になりたい。


そう自分の夢が定まってから、 このU23の4年間ヨーロッパへの挑戦を続けてきて、それは本当にかけがいのない時間だった。もう、散々打ちのめされてきて世界の厳しさというのを肌で感じてわかってきたはずなのに、この先も夢への挑戦を終わらせずに続けていきたいと願っている。


目標としていたU23期間に世界トップ10入りという目標。それは達成できなかった。だけど、その現実よりもこれからの自分へ対する期待の方が自分の中では勝っている。自身U23の最終レースである世界選手権、シーズンの最終戦で迷いは消えてそう強く思えたことが自分自身が世界選手権を戦って得られたものだと思う。

  
  photo:Kei Tsuji



3年半前、浅田監督のもとで世界で戦う選手を目指したい。そう志願した時に一言だけ聞かれたことがある。「世界は本当に厳しいぞ、それでもやっていけるか」 自分は「はい」と答えた。
今、もう一度その質問を聞かれたとしたら、、、世界でやっていける選手のつぼみを自分は持っていると信じてもう一度「はい」と答える。




この世界選手権をもってU23カテゴリー終了。今まで本当に多くの人たちに支えてもらってここまでやって来れました。お世話になった多くの人たち、環境、それを築いてくれた人たちに感謝しています。


これからのことはどうなるかまだわからない。
ひとつ確かなことは、世界という舞台で走り続けていきたい。自分を信じて疑わずに夢への挑戦を続けていきたいということ。


   
   Photo: Yuzuru SUNADA